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底本の書名    さぬきの民話
 底本の著者名   北條令子
 底本の編集者   財団法人 香川県健康長寿財団
 底本の発行者   香川県長寿社会センター
 底本の発行日   平成十一年三月
入力者名      松本濱一
校正者名      郡家緑
入力に関する注記
   文字コードにない文字は『大漢和辞典』(諸橋轍次著 大修館書店刊)の文字番号を付した。

登録日   2003年2月14日
      


さぬきの民話

はじめに

 人生八十年時代を迎えた現在、この長い人生を県民の皆様誰もが健康で生きがいをもって暮らす
ことができるような、明るく活力のある長寿社会にしていく必要があります。
 香川県長寿社会センターは、「喜びあえる長寿社会かがわ」の実現をめざして、平成元年六月に
発足し、高齢者の社会参加の促進や健康と生きがいづくりを推進するための各種の事業を展開して
まいりました。
 「シルバー香川」は、健康と生きがいづくりに向けての広報・啓発のための総合情報誌として、
当センターが発足して以来、季刊誌として発行を続け、今日まで県民の皆様にご愛読いただいてい
るところであります。
 この度、当センターが発足十周年を迎えるにあたり、故北條令子氏が各地を訪れ、その地方に語
り伝えられた昔話を採集して、「シルバー香川」に掲載しておりました「さぬきの民話」を冊子に
して、ここに発刊することといたしましたので、ご一読いただければ幸いに存じます。

平成十一年三月
                       財団法人 香川県健康長寿財団
                       香川県長寿社会センター
                             専務理事 前田 治衛 

発刊に寄せて

 北條令子さんの随筆に「鬼が笑っても」というのがある。民話や伝説を愛し続けた北條さんの珠
玉の一編である。その中の一節に「鬼と言えば悪ときめつけられている。鬼の立場の弁解や主張に
も、もっと耳を傾けたい」ときらわれ者で恐ろしい鬼にも優しい思いやりを示している。また「退
治しても退治しても鬼は出て来る。人間が鬼と名づけられた悪者たちである」とソフトな表現なが
ら、その背後には、いつも凛とした正義感がひかえていた。
どんな人にもこの両面をもって接した北條さん。あの人なつっこい笑顔は、仏教でいうお布施の一
つ「和顔施(ルビ わげんせ)」(にこやかな表情は他人をなごませる)そのものであった。
 そんな北條さんは昨年末、病魔との戦いの末、あっさり「鬼籍」の人となられた。惜しまれる六
十六歳の生涯だった。円熟し脂が乗って来たときだけに残念である。こよなく愛した「さぬきの民
話」を「シルバー香川」(県長寿社会センター機関誌)に書き続けておられた。最終回は病床からの
投稿だったという。「シルバー香川」も「かがわ長寿大学」も今年は、発足後十周年を迎えた。こ
の一月から「シルバー香川」は「生涯青春」と改題、新しくスタートした。北條さんの文章はなか
った。長寿大学では北條さんと一緒に、私も発足時から講師を努めさせて頂き、話すことの難しさ
を教えてもらった。また、「香川県史」や「香川県大百科事典」編さん時には、ことのほか多くの
御力添えを頂いた。さらに文化財保護の面や各種シンポジウムでは、紅一点として存在感を示して
おられた。各地のカルチャースクールや講演会に、講師として引っ張りだこだった。活躍される姿
をよく見かけたものだ。
 県長寿社会センターは今年発足十周年を迎えた。これを記念して北條さんが、「シルバー香川」
に書いておられた「さぬきの民話」をまとめ、再出版することになった。嬉しい限りである。古老
たちの重い口から、貴重な昔話を引き出したのも、北條さんの人柄に負うところが多かった。古い
ものにきちんと目を向け、記録し続けさぬきの民話をまとめた努力は、賞賛に値する。この本は北
條さんへの素晴らしい追悼記念誌となった。
 牟礼町石の民俗資料館初代館長として、北條さんは自らの経験と知識を惜しみなく注ぎ込んでお
られた。民俗の立場から「人と石」のかかわりを優しく説き、石への親しみを感じさせていた。こ
の本は県下小・中学校に配布され、民話を通じ古い世代と子どもたちの交流を目指すのだという。
これぞ北條さんが心から望むところであった。(合掌)

 平成十一年三月
                        小川太一郎

目次

はじめに
発刊に寄せて    小川太一郎

天狗さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
閻魔大王の借金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
節句の酒は飲むもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
野鳥の聞きなし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
遠めがね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
お色気狸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
閻魔大王の悩み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
妖しい力を持った女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
狸の恋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
海を渡った藤五郎狸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
美人狸に逢いました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
長い名と短い名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
笑い話・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
歌問答・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
おはなの山姥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
世界は広い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
うまい話二題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
福の神と貧乏神・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
猫のはなし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
仁王さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
歌くらべ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
無辺さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
お豆腐大好き法然上人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
屁こき嫁さまと柿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
                   さし絵 北條カツ昭